ひきこもりと殺人事件

c3.png「事件を風化させないために残しておくよ」

愛知県豊川市一家殺傷事件について。

2010年4月17日、愛知県豊川市で30歳の男性が家族5人を殺傷してしまった事件。報道では、男性はその時まで15年間ひきこもり状態にあったと強調されていたね。

日本には何万人も、ひきこもって苦しんでいる人がいる(最低でも推定25万世帯)。いつものことだけど、こういう事件が起こるたびに、ひきこもり当事者の多くが危険だと思われて白い目で見られてしまうか、あるいは当事者自らが「危険視」されることに耐えがたくなり、かろうじてつながっていた他者とのコミュニケーションを自ら絶ってしまうんじゃないかと心配になるんだ。

痛ましい事件をセンセーショナルに報道することは、広く注意を喚起させる時には必要かもしれないけど、こうした報道で、ひきこもっている人達がより一層追いつめられてしまうことがあるとすれば、事件の連鎖は後を絶たないだろうね。

ひきこもりと犯罪に関連性はない。だからといって、ひきこもりの人が罪を犯さないかというと、そうではない。罪を犯すひきこもりの人もいるという事実は受け入れなくてはならなくて、そうした凶行に及ぶ境界線を見定め、一人でも犠牲者が少なくなるようには何をしたらよいか、具体的な支援方法を作り上げていかなくてはならないんだよね。

例えば、この事件の鍵となる『インターネット回線の解約』は、ひきこもり当事者にとっては『社会的に死ね』と言われていることと同等だということを理解する必要があるよ。それはあたかも、足の不自由な人から車イスを奪う行為に等しいはずなんだ。ひきこもりの人を障害者扱いする気はないけれど、少なくとも、そのような感覚は、ひきこもり当事者には理解できるんじゃないかな。なかなか一般の方には理解されないかもしれないけどね。だけど、最低限、現代においてひきこもりながらでも生きていくためには、もはやインターネットは必需品だよ。それが、現実のコミュニケーションの代替品であったとしても、「人からの刺激」を一切与えないという方法より悪いこととは言いきれない。

ひきこもりという問題に関しては、なかなか外側からは何が起きているかということが見えないものにもかかわらず、あるいは、だからこそ、外側から必死に働き掛けて当事者を動かそうとするんだけど、せめて同時に、当事者の心情を理解する姿勢は貫いていきたいもの。ひきこもりの問題は、警察への相談も場合によっては必要だけど、まずは家族が継続的に「心理相談の専門施設」に相談し続けることが大事だよ。そこで、ひきこもる本人の心情を理解し、自分達家族の思いを自覚し、コミュニケーションの悪循環を断ち切り、双方が折り合えるところを見つけていかなくちゃならない。また、本人達にはインターネットより、実際に会って話した方が楽しいということを知ってもらうために、ユーモアを大切にすることも忘れたくないな。苦しみの中でこそ、きっと笑いは必要なはずだからね。


t1.png「事件の概要は私がまとめておいたわ」

【事件の起きた日時】
2010年4月17日午前2時過ぎ

【容疑者】
長男(30)無職
(事件の1時間後、自宅裏の葬儀場の敷地内で返り血を浴びた容疑者が立っていたところを逮捕)

【被害者】
父親(58/ガス会社勤務)・姪(1)を殺害。
母親(58)・弟(22/三男)・弟の妻(27)に重軽傷を負わせた。
もう一人の弟(24/次男)は、外出先で事件を知った。
(父親は仕事に対して遅刻や欠勤がなく真面目な人。同僚には家族のことを相談してはいなかったが、親族には「私が(容疑者に)言うと怒るんだよ」と困っていることを明らかにしていた。弟も「父親が兄に強く言えない」と会社関係者に話していた)

【被害状況】
「誰がネットを解約した」と2階で寝ている母親を懐中電灯で照らしながら問い詰めた後、弟が解約をしたと聞き、1階から包丁を持ちだし、母親、姪、父親らの順に、それぞれ数回から十数回刺した(5人に計44ヵ所)。
その後、自室の布団にライターで火をつけ、自宅を半焼させた。
逮捕後には「父親にネットを止められた」と話しており、供述は矛盾している。

【きっかけ】
家族がインターネットを勝手に解約したため。
(数日前に家族が電話回線を止めたが、勝手に回線を復活。16日に再度、ネットの回線を家族に止められたことに対する怒りが引き金となって犯行に及んだ)

【背景】
・中学時代は、無口でおとなしいタイプ。新設されたコンピューター部に入り、コンピューター室によく通っていた。
・中学卒業後は、同窓会や地域の祭りに参加することはなかった
・中学卒業後1年程働いた後の15年前からひきこもっていた
・毎月20〜30万円の父親の給与を管理し、父親に5万円、母親に4万円を渡していた
・父親名義のクレジットカードを作り、ネットオークションで買い物をして借金が200万円以上あった
・事件前に被害者らは計7〜9回、警察に相談あるいは通報していた

【参考記事】
スポニチ
http://www.sponichi.co.jp/society/flash/KFullFlash20100419077.html
http://www.sponichi.co.jp/society/flash/KFullFlash20100418023.html?feature=related
http://www.sponichi.co.jp/society/flash/KFullFlash20100418022.html?feature=related
http://www.sponichi.co.jp/society/flash/KFullFlash20100418021.html?feature=related
http://www.sponichi.co.jp/society/news/2010/04/18/01.html?feature=related
http://www.sponichi.co.jp/society/flash/KFullFlash20100417044.html?feature=related
http://www.sponichi.co.jp/society/flash/KFullFlash20100417025.html?feature=related

【ひきこもりの人が起こしたとされる近年の事件】
(毎日新聞 2010年4月17日 中部夕刊調べ ※年齢は事件当時)
2004年10月 両親を殺害したとして高校中退後に20年間ひきこもっていた東大阪市の男(36)を逮捕。「将来に不安を感じた」と供述。
2004年11月 両親を鉄アレイで殴って殺害したとして水戸市の男(19)を逮捕。「しつけの厳しい祖父を殺す恐怖を克服するため、先に両親を殺した」と供述。
2004年11月 両親と姉を刺殺したとして高卒後に自宅にひきこもっていた茨城県土浦市の男(28)を逮捕。「いつか自分が殺されるので、その前に殺そうと思った」と供述。
2006年05月 東京都杉並区で男(33)が両親を殺害後、焼身自殺。男は定職に就かず、ひきこもりがちだった。
2008年01月 母親と弟、妹を刺殺したとして小学校時代からひきこもりがちだった青森県八戸市の男(18)を逮捕。
2009年07月 父親を殺害したとして千葉県大多喜町の男(20)を送検。インターネットの掲示板に「今から父、祖母、祖父を殺す」と予告していた。
2009年09月 妹を刺殺したとして高校中退後に引きこもっていた愛知県春日井市の男(22)を送検。「音がうるさかった」と供述。


b1.png「中には、精神疾患を発症している疑いが強いのもあるよなぁ」
k1.png「ひきこもりって言ってもひとくくりにはできないんですね」
n1.png「なんか、あたしには話せる相手がいてよかったなって、さすがにちょっと思うよ」
【ひきこもりの最新記事】
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