過大評価・過小評価:認知の歪み(9)

k3.png「ギャー!出たー!誰か来て!!!」

sh1.png「どうしました?!」

k3.png「アレよアレ!ついにアレが出たのよ、うぅ、もうココも終わりだわ(泣)」

sh1.png「アレってもしかしてアレですか?!」

k1.png「そうよアレよ!アイツがカサカサっと猛スピードで私の前を横切ったのよ」

sh1.png「わかりました。第一種戦闘配備を発令します。すぐに皆を集めて、緊急対策会議を」

n2.PNG「おいおい。んな、大袈裟な」


かうんさるーから一言
c3.pngごきげんよう、おひさしぶり」(伊坂幸太郎『魔王』より)

過大評価は、誇大視、拡大解釈とも言われているけど、ここでは過大評価・過小評価で統一するよ。

過大評価・過小評価は、物事を大きく捉えたり小さく捉えたりして、ありのまま客観的に判断できていない状態のことを言うんだけど、この認知の歪みは、果たして歪みと言っていいのかわからないな。というのは、健全な人であっても、物事を適切に評価できているかといえばそうでもないからね。何をもって適切というのか、過大評価でも過小評価でもないと誰が判断できるのか、そういう難しさを含んだ認知の歪みってわけ。逆に、多少認知が歪んでいるくらいのほうが人間らしいとも言えるしね。常に、物事をありのまま客観的に判断できるなんて、心の無いマシーンって感じがするでしょ。

まずは、過大評価の例。「ゴキブリを1匹見たら30匹いると思え(※1)」
このフレーズってなぜかみんな知ってるよね。これは、1匹しか実際には見ていないのなら、「ゴキブリが1匹いた」、「ゴキブリを1匹見た」とだけ言うのが客観的であるということ。それなら認知の歪みが無いということになるね。そう思える人は、ゴキブリの話だけじゃなくて、いろんなことに不安になりすぎないで生きていける人だと思うよ。2匹目、3匹目を見つけても、その都度落ち着いて対処していけるだろうし。一方、「1匹いたんだから30匹いるかもしれない!」と思ってしまう人は大変だね。もう落ち着いて寝られやしない。あっちの隅にも、こっちの隙間にも、そっちのタンスの裏にもまだ見ぬ29匹ものゴキブリがいるかもしれないんだから。ゾッとしちゃうよね。あと、ゴキブリは数的にも過大評価されやすいけど、能力的にも過大評価されやすいね。「人類滅亡後にもゴキブリは生き残る」と言われたりするけど、実は、そんなにゴキブリはすごくない。人類と一緒に滅亡するかもしれないし、ゴキブリより生き残る可能性のある虫もいるらしい。気になる人はウィキペディアでゴキブリについて調べてみよう(←クリック注意:ゴキブリの画像があるよ!)。
※1 ゴキブリは一回で30個程の卵を産むことからこう言われている。

逆に、過小評価の例。これもゴキブリで考えてみよう。
例えば一日にゴキブリを30回も見たのに、「平気平気、多分同じゴキブリだから」なんて1匹しかいないと思うのは、過小評価すぎるよね。のんきなことを言ってないで、ちゃんと片っ端から退治したほうが衛生上好ましい。ただ実は、悪い出来事を過小評価するとポジティブな考え方になるっていうことは覚えておいたほうがいいかな。多くの人が、ポジティブに考えられるようになりたいと願っているけれど、それって実は、「歪んだ認知を身につけたい」と言っているのと同じようなものなんだよ。ポジティブに考えすぎる人は、楽観主義的で危機管理能力が低い、ということにもなりかねないから、それはそれで考えものだと思うよ。

もう一つ、過小評価の例。「アイツはゴキブリ以下の人間だ」
これは個人をかなり過小評価してるね。ひどい言いようだ。逆に、こういう事を言う人は、自分のことを過大評価していたりするよ。過大評価と過小評価はセットで働いているってことはけっこう多いから、ゴキブリの例じゃなくて少し真面目に説明しておくよ。

例1:Aさんが失敗した。その後、私も失敗した。
・Aさんは、本来、能力があるのに運が悪くて失敗した(Aさんを過大評価)。
・私は、Aさんの失敗を活かすこともできず、無駄に失敗を繰り返した(私を過小評価)。

実際には、Aさんも私も失敗したのだから、その時点での評価に差はないはずだよね。けれど、「私よりAさんの方が優れているはずだ」という思い込みがあると、物事の捉え方が歪められてしまう。言葉の上でのポイントは、「本来は○○のはずが」とか「本当は○○なのに」という言い方かな。これは、どちらも現実を受け入れていない言葉。こうした現実に起きた出来事よりも、想像や予想、思い込みを優先して考えてしまうのは、認知の歪みと言えるね。

例2:私と同じ悩みをBさんがもっていた。
・「Bさんなら解決できるよ」と声をかけた(Bさんを過大評価)。
・Bさんにはそう言ったけど、私には解決できそうにない(私を過小評価)。

同じ内容なのに、他人には言えても自分には言えないというケースも過大評価・過小評価が関係していることが多いよ。特に、悩みごとに関しては、自分の悩みというのはとにかく大きく感じるもので、自分には解決できる力が無いと感じやすい。「人生終わった」とか、「一巻の終わり」という言い方も、うまくいかない出来事を過大評価し、自分の能力を過小評価している言い方だね。そういう風に過大評価と過小評価はセットになると、強力になって厄介なので、なるべく今の内に改善しておきたいものだね。

じゃあ、過大評価・過小評価という認知の歪みを改善するにはどうしたらいいか。過大評価・過小評価は、「主観」が問題なので、主観を排除すればいい。人間の考えで最も主観が現れるところはどこかというと、それは修飾語。ということで、修飾語を用いないで考えることが一つのポイントになるんだ。次の2つの文章を見比べてみてほしい。

A:「昨日、とんでもなく大きな失敗をしてしまった。当然、相手は烈火のごとく怒っていた。この先ずっと、その人とうまくやっていけるかどうか、自信がこれっぽっちもない」
B:「昨日、失敗をしてしまった。当然、相手は怒っていた。この先、その人とうまくやっていけるかどうか、自信がない」

Aは絶望的な感じがするよね。こうした話し方をするのは、パーソナリティ障害の方や不安の強い方に多いんだ。表現力が豊かではあるんだけど、それゆえ、感情も大きく揺さぶられてしまう。逆に、Bのように修飾語を用いなければ、事実だけを抽出できる。この方法は、ポジティブに考えられるようにするのが目的ではないから、「自信がない」ことに変わりはないんだけど、Aよりは、Bの方がなんとかやっていけそうな気がするんじゃないかな。自分の口癖や話し方が、不安や不満、自信の無さに拍車をかけていたりするので、紙に書いて修飾語を消していくのもよいし、カウンセリングで話して、カウンセラーに指摘してもらうのもよいね。こうしたことを自分一人で、頭の中だけで整理するのはほとんど不可能だと思うよ。

最後に余談だけど、この記事を書くにあたり、ゴキブリを1匹見たら何匹いると思えだっけ、と思って「ゴキブリを1匹見たら」で検索してみたら、10匹、20匹、30匹、50匹、100匹、1000匹と各人バラバラだったよ。ボクは30匹だと思ってたけれど、一体何匹がこのフレーズの正解なんだろう?



認知の歪み
@白黒思考
Aマイナス化思考
Bべき思考
C感情的推論
D飛躍的推論
E部分的焦点づけ
F自己関連づけ
G過度の一般化
H過大評価・過小評価
Iレッテル貼り
この記事へのコメント
ところで自己愛性人格障害の人は自分を過大評価、相手を過小評価しやすいのでしょうか?

ちなみに認知の歪みは「精神疾患」には入るのでしょうか?
Posted by テル at 2012年08月23日 00:24
その通りです。基本的に、自己愛性パーソナリティ障害の方は、自分を過大評価し、多くの他人を過小評価しています。ただし、自分が気に入っている一部の人や理想としている人(カリスマ的な人物)のことは、過大に評価します。
認知の歪みは精神疾患ではありません。一般の方にもみられます。
Posted by モンキークリニック所長 at 2012年08月23日 13:50
ちなみに自分の思い通りになる人に対しては過大評価、思い通りにならない人に対しては過小評価したりもしますか?

認知の歪みがあると精神疾患を患いやすくなりますか?
Posted by テル at 2012年09月01日 11:41
全くその通りです。理解されてますね。

「認知の歪み」とは柔軟性が失われた物事の見方や考え方なので、精神疾患を患いやすくなります。気分障害(うつ病等)、不安障害(パニック障害等)には特に関係します。
Posted by モンキークリニック所長 at 2012年09月04日 00:56
なるほど
分かりやすく教えて頂いてどうもありがとうございます♪
Posted by テル at 2012年09月04日 23:49
はじめまして。いつも分かりやすくてためになる記事をありがとうございます。
私は極度の心配性・臆病者です。未経験のことに臨もうとする際に、様々なマイナスのイメージが頭に浮かんできて、足が震えたり動悸がするほど恐怖感を覚えます。
それが原因で、就活などで実際に行動に移すことを避けてしまったりします。(面接などを辞退してしまったりします。)
なぜ、そんなに恐怖感を覚えるのか…。自分なりに考えたのですが、おそらく、面接で失敗してしまうと、自分の無能さが暴露してしまい、社会から必要とされず一人ぼっちになってしまう…と無意識に心身が反応しているのではと思っています。
これも認知の歪みなのでしょうか。また、私は未経験のことに臨む際に「誰かに指導してもらってからではないとできない…」と思ってしまうのですが、これは依存性パーソナリティー障害の傾向があるでしょうか。
長々と失礼いたしましたm(_ _)m
Posted by りこ at 2012年09月10日 01:14
>テルさん
いえいえ、足りない部分を補ってくださる質問なので、こちらも助かります^^

>りこさん
書き込みありがとうございます。
はい、おそらくですが、依存性パーソナリティ障害の傾向と回避性パーソナリティ障害の傾向が考えられます。どちらも不安を中心とする「C群」というパーソナリティ障害に含まれます。
精神科に行くと、社交不安障害(SAD:social anxiety disorder)と診断されるかもしれません。
認知の歪みも関係していそうです。認知療法等の心理療法で、事前の不安を軽減し、投薬治療で、実際の場面の緊張を軽減するという組み合わせが効果が高いと思います。
Posted by モンキークリニック所長 at 2012年09月10日 23:44
詳しく教えてくださりありがとうございます。やはりパーソナリティー障害の傾向があるのですね。
事情があり医師の診察やカウンセリングを受けることは難しいのですが、最近は勇気を出して就職説明会への出席や選考へのエントリーをしています。面接も何度か受けました。
今のところ、毎回、強い不安→実行→「どっと疲れたけど、案外あっさりしてたな…」の繰り返しです。続けていけばいつか希望が見えてくることを信じて頑張ります。
ありがとうございました。
Posted by りこ at 2012年09月21日 23:48
おお、すごいですね。
書き込まれた状態から察するに、相当な勇気を振り絞っていることと思います。
不安の乗り越え方は正しいので、繰り返し続けられるといいですね。
就職決まったらぜひ書き込んでください。似たような悩みを抱えている方の励みになりますので^^
書き込みありがとうございました。
Posted by モンキークリニック所長 at 2012年09月27日 03:23
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